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本校の教育活動が『週刊ダイヤモンド』に掲載されました

本校の理数アカデミー事業の一環として行っている「アメリカ・シリコンバレー研修」(中3対象)が『週刊ダイヤモンド2019年6月1日号』に掲載されました。記事の筆者である校條浩氏は富士高校の卒業生で、世界を舞台に活躍されています。

▼▼▼記事を転載します▼▼▼
シリコンバレーの流儀 シリコンバレーの精神は中学生から
「Stay hungry, stay foolish」――。米国が卒業式シーズンを迎える6月になると毎年、この言葉を思い出す。今や伝説となった故スティーブ・ジョブズ氏のスタンフォード大学卒業式でのスピーチの一節だ。シリコンバレーに生きるわれわれの心に、今でも真っすぐ突き刺さる。
 意訳すれば、「常に求めよ。決して分かった気になるな」だ。だが、これには「チャレンジすれば失敗もあり、己の無知さを知る。それが人を成長させる。常に先を求め続けよ」との思いが込められている。「他人の雑音に惑わされず、自分の心の声を聞け」と若者の自立を促し、シリコンバレー精神の価値観を見事に表現している。
 一方の日本は、周りの空気を読み、失敗の回避を最優先することが重要視される。それでは、イノベーションは起こらないし、新しい時代への発展も望めないだろう。
 私は、そんな日本を変える第一歩として、教育の見直しが欠かせないと考えている。ジョブズ氏の言葉を体現するチャレンジ型のリーダーを多く生み出すシリコンバレーは、大いに参考になるはずだ。
 そうした考えから、最近シリコンバレーへの研修旅行がはやっているが、多くはただの観光とさほど変わらない。ただ、幾つかものすごい成果が上がっているケースがある。中学生のシリコンバレー研修だ。
■"内なるもの"が変わる
  一つは、神奈川県の聖光学院。今年で5回目となるが、生徒たちは毎回多くの気付きがあるようだ。特徴的なのは、シリコンバレーで実際に戦っている「本物」の人たちと直接交流して意見交換することだ。それを通して、英語が理解できず質問できなかったことを悔しく思い、真剣に英語の勉強を始める者、研修中に組んだチームで新しいプロダクトを継続開発することを決める者、現地のロボコンの見学で刺激を受け、ロボットプログラミングのチームをつくる者など、具体的な行動につながっている。
 この取り組みの立ち上げで中心的役割を果たしたのが、元経済産業省の五十棲浩二氏。経産省から米国留学中に私の会社でインターンをした。帰国後、「好奇心を持って課題に果敢にチャレンジする人材を輩出するには教育が肝心だ」との意を強くし、経産省を辞して母校の聖光学院に校長補佐として転身。新たな教育プログラムの目玉としてシリコンバレー研修を開始したのである。
 もう一つは、都立富士高等学校附属中学校の取り組みだ。聖光学院と同様、中学3年生二十数人がシリコンバレーで「本物」の人たちと交流。引率した教師によれば、「研修中に、生徒の“内なるもの”が時間単位で変わっていく様子が見られた。人生を変える研修だったといっても過言ではない」ものだったという。
 これは「学ぶ」のではなく、自分自身に向き合い、「発見」する過程ではないだろうか。自分は何者なのか、強みや弱みは何か、そして何をしたいのか――。これがチャレンジ精神の源ではないか。
 そして、研修旅行の最後に生徒たちはこう言い放ったという。「人の成功や幸せは皆違い、誰かが決めるのではなく自分で決めるのだと気付いた」「人生一度きり、人に決断させるなんてもったいない」「他人の雑音に惑わされず、自分の心の声を聞け」というシリコンバレーの精神を、自ら悟ったのである。
 実は富士高校は筆者の母校で、2010年に中学校が併設され中高一貫校となった。聖光学院と同様、中学3年生が高校受験を気にせず自由闊達に活動できる状況があったからこそ、シリコンバレー研修が実り多いものになったといえる。
 準備には時間をかけている。中学1年生から年6回程度、シリコンバレーでの起業経験のある人や、挫折にめげずチャレンジして成功した人などを招いて特別講義を行う。その中では、デザイン思考や"Fail fast"(素早く着手し、早く失敗を経験する)のようなシリコンバレーでの事業創造の考え方も学ぶ。
 さらに、中学3年生になると、自分自身で世の中の課題を探り出し、アイデアピッチを行う。勝ち残った課題解決のアイデアに仲間が集まり、チームとしてさらに議論を深め、何度も修正を加える。そんな試行錯誤を経て、シリコンバレー研修に出発するまでには、プレゼンテーションが完成する。
 私は実際、シリコンバレーで彼らのプレゼンテーションを聞いたが、傾聴に値するものだった。現地で活躍する日本人も参加し、真剣にフィードバックをしていたのが印象深い。あくまで大人同士、目線は同じだ。
■枠を飛び越える生徒たち
 言ってみれば、このような活動そのものがイノベーションであり、そこには聖光学院の五十棲氏のようなリーダーの存在がある。富士高校附属中学では、英語科主任の小野澤信一氏のリーダーシップがなければ実現しなかった。そもそも都立校でシリコンバレー研修をしようと思い立ち、実行に移した校長(当時)の上野勝敏氏の慧眼はシリコンバレー型そのものだ。
 そして、真のリーダーは自分だけが突出して引っ張るばかりではない。どちらの学校の場合でも、他の先生を巻き込み、外部の専門家の共感を得て新たな試みに慣性力を付けている。富士高校附属中学の場合には、中高生のシリコンバレー研修に取り組む中野修二氏がシリコンバレーの「本物」たちと掛け合った。シリコンバレーの「本物」の人たちは意気に感じ、無償で対応してくれるのだ。
 後日談となるが、富士高校附属中学の生徒たちは、帰国後、自分たちの判断で、どんどん研修や授業の枠の外に出て行動するようになった。その一つが、同じ問題意識を持つ人のために立ち上げたオープンな情報共有組織、「UP!」だ。Unlimited Possibilityの略で、可能性は無限であり、そのためには常にチャレンジし続けるという意味を込めている。
 両校の生徒たちは、「Stay hungry,stay foolish」を既に行動に移し始めているのである。

【校條 浩(めんじょう ひろし)氏プロフィール】
小西六写真工業(現コニカミノルタ)にて写真フィルムの開発に従事。その後MITマイクロシステムズ研究所、ボストン・コンサルティング・グループを経て、1991年にシリコンバレーに渡る。94年よりマッケンナ・グループのパートナーに就任。2002年にネットサービス・ベンチャーズを創業。2011年からは、先進VCに出資するNSVウルフ・キャピタルを立ち上げ、企業イノベーションを先導している。主な共著書に『ITの正体』『シリコンバレーの秘密』(インプレスR&D)、『日本的経営を忘れた日本企業へ』『成長を創造する経営』(ダイヤモンド社)。東京大学理学部卒業、同修士課程修了。米マサチューセッツ工科大学(MIT)工学修士。

『週刊ダイヤモンド2019年6月1日号』
p98~99「シリコンバレーの流儀」より転載
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